昨日今日と「大学入学共通テスト」が実施されています。ただでさえ緊張するであろうところにオミクロン株の急拡大があり、さらに東大会場前での刺傷事件に津波のニュースまで加わって世上が騒然とするなかで、受験生の精神的負担は察するに余りあります。ひとりひとりがなんとか本来の実力を出し切ってほしいと願うばかりです。


さて、例によって、昨日の試験問題が新聞に掲載されているので、受験生たちの健闘を祈って(?)世界史と日本史の問題を解いてみました。3年前に平成最後のセンター試験を解いて以来の挑戦になります。

平成最後のセンター試験問題を解いてみた


まずは世界史Bです。


3年前の記事にも書きましたが、現役時代は世界史が一番確実な得点源だったので、今でもそれなりに自信がありますが、採点結果は・・・


91点でした。ヨーロッパ中世の知識がほとんど抜け落ちていることがあらわになったものの、なんとか9割得点できました。


問題はうまく作られているなあと思いました。実際の研究対象に用いられるような史料やデータを題材にしながら、高校教科書レベルの知識と結びつけて問題に落とし込んでいます。


第2問のBでキューバ危機を取り上げているのは、今年が危機からちょうど60年というのを意識してのことでしょうか。

今年(2022年)〇周年を迎える出来事一覧(随時加筆)


第3問のAで取り上げられている東海散士(柴四朗)も実は今年がちょうど没後100年ですので、これもひそかに今年を狙っての出題かもしれません。キューバ危機と違ってほとんどの人に気づかれないと思いますが。実は上記の「〇周年」の記事を書くときに取り上げるかどうか迷ったのですが、現在ではあまりメジャーな人物ではないからと思って取り上げませんでした。今回共通テストの題材になったので付け加えることにします。


第5問は「墓」や「廟」を題材にした問題ですが、みなさん、「墓」と「廟」の違いはご存知でしょうか。この違いを理解するにはまず、「魂」と「魄」について理解する必要があります。「魂」と「魄」はともに「たましい」ですが、「魂」は精神をつかさどるたましい、「魄」は肉体をつかさどるたましいです。生きている間は、この2つのたましいと肉体・精神が一体となって活動しているわけですが、亡くなると肉体と精神が分離し、肉体とそれをつかさどる魄は地上に残り、精神とそれをつかさどる魂は天空へ上がっていきます。地上に残った魄をまつるのが「墓」であり、天空へ上がった魂が地上の人(子孫など)の祈りに応じて地上に戻ってくる際のよりしろとなり、魂をまつるための場所となるのが「廟」です。したがって、「墓」には全部にしろ一部にしろ遺体が存在しますが、「廟」に遺体は不要です。第5問のBで取り上げられている関帝廟も「廟」ですから関羽の魂のよりしろであって、遺体の存在する「墓」ではありません。だからこそ世界中の中華街に存在するわけです。


次は日本史Bです。


これも3年前の記事に書きましたが、僕は高校で日本史を履修していませんので、趣味の知識だけによる解答の結果です。


82点でした。言い訳になりますが、問題文の読み間違いが多かったです。本物の問題用紙よりかなり文字が小さいので、世界史を終えて日本史に取り掛かった時点で相当に目が疲れていました。老眼ではないです。老眼ならそもそも最初から読めないと思います。老眼ではないです(かたくなに否定)けど、第6問のB問5の2枚の写真にいたっては、どういう写真なのか全くわかりませんでした。いま写真に撮ってみてようやく把握したところです。もっともこの手の問題、写真がなくても設問の文章だけで解けることが多いです。


第1問は日本人の姓名についての問題で、「氏」「姓」「名字(苗字)」や下の名前が題材になっています。「氏」には「の」がつくが「名字」には「の」がつかない、など、僕が昔書いた記事「氏(うじ)・姓(かばね)・名字(みょうじ)・実名(じつみょう)・仮名(けみょう)- 日本人の名前の歴史」に書いたことと同じ内容が記述されており、ひょっとしたら出題者は僕の記事を読んで問題を思いついたのかもしれません。(そんなわけない)


第5問は日本における鉄道開業150年にちなんだ問題です。世界史のキューバ危機と異なり、こちらは問題文自体にそのことを明言しています。鉄道ファンの学生に有利な問題のような気もしますが、それを言い出すと歴史ファンの学生にとって日本史や世界史という科目自体が有利という話になってしまうので、もうこれは仕方ないですね。


最大の衝撃が、第6問の問7、最後の問題の選択肢Yでした。

国鉄の民営化は、小泉純一郎首相の時に行われた。

もちろん、この選択肢は誤りで、国鉄民営化は中曽根首相の時代、小泉首相がおこなったのは郵政民営化なのですが、なんと日本史の問題にとうとう21世紀の首相の名前が出てきました。小泉時代なんてつい昨日のことにしか思えませんが、考えてみれば今年の受験生のほとんどが、小泉時代の記憶などないはずですから、彼らからすればすでに歴史上の出来事・人物だとしてもおかしくはありません。


3年前の記事では、湾岸戦争やソ連崩壊が歴史上の出来事として出題されていることに時代の流れを感じていましたが、もはやそういうレベルではなくなってきました。昭和は遠くなりにけり、どころか、平成も遠くなりにけり・・・・・ついでに僕の眼の近点距離も遠くなりにけり・・・・


ともあれ、受験生の皆さんは、今晩は自己採点で大変かと思いますが、結果がよくても悪くても、しっかり休んで、今後に向けて英気を養ってください。